綾小路きみまろ

「中高年、使用期限切れの亭主と賞味期限切れの女房がいがみ合う。これがほんとの腐れ縁」「ストーカー事件が騒がれています。気をつけなくてはいけません。若くて、きれいで、スマートな女性が狙われます。いいですか、そこの奥様、メモをおとり下さい。若くて、きれいで、スマートな女性・・・今日ここにお集まりの皆さんにはまったく関係ない話です(爆笑)」「世の中不祥事だらけ。警察でもっとも真面目なのは誰だと探したら・・警察犬だったそうです」「サラリーマンのお父さん、会社の手となり足となり働いて首となり」「人は必ず死ぬのです。死亡率100%です。だからせめて今日を楽しく生きようじゃありませんか」「ああ長生きなんてしたくないといいながら、栄養剤を飲み」・・・

突然、ブレイクした綾小路きみまろ。彼の講演会と称す独演会は、今では、チケット即日完売。爆笑トークライブを収録したCD(テイチク)は、現在オリコンチャートTOP10入り。文にすると、えげつない問題発言も、彼の容姿キャラクター、抜群のトークにかかると、観客は納得、こんなにけなされ罵倒されているのに、大爆笑と拍手の渦。綾小路きみまろはまさに、突然現れた中高年の星である。観客は圧倒的に中高年、テレビを見て御覧なさい。いまや笑いはバラエティに代表されるように、若者のウケ狙いばかり。一緒に笑えない、笑いについていけない中高年が、初めて心から笑える芸人に出会った。それが綾小路きみまろ。老いを、衰えを、仮面夫婦の真実を、親子の溝を、働いて働いて挙句の果てに社会に見捨てられた寂しさを、罵倒、けなされながらも感じるある種の爽快感。美しく生きるだとか、老いてこそすばらしき人生だとか、キレイ事で語られる中高年、老後を、「そうじゃないでしょ。醜く、そして不都合なありのままの現実を認め、そこから、頑張っていこうじゃないか」というのが、彼のメッセージだ。本当のことだから、観客の共感を呼ぶのだ。

初めて聴いたのはラジオの深夜番組だった。ずっと気になっていたら、このブレイク。聴けば、森繁久弥さんや小林幸子さんの舞台司会を皮切りに、苦節30年だそうである。暗い、先行きの見えない時代が生んだ申し子だろうか。ボブ・サップに継ぐ、異端の注目株である。ただ、若い人には、今ひとつわからないだろう。興味を持ってCDを買ってもゴメンナサイである。もし、涙がこぼれるほどに笑えたら、それは、あなたが立派な中高年、及び中高年に近づいた証である。
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