嫌われる日本

日本は世界の嫌われ者なのか。下火になったとはいえ欧米には依然として「日本異質論」の下地がある。地勢的に日本は欧州からは最も遠い果ての国であり、アメリカからもはるか太平洋のかなたにある国であるし、もともと視野の外に位置する国だ。それが目覚しい経済成長とエコノミックアニマル(いまや懐かしき言葉だが)ぶりで、世界の一等国にそびえたったのだから、彼らにとって日本はまことに不気味な国であり、それが警戒心となり、日本異質論に結びついた。もちろん良い意味で使われたのではない。

隣人でもあるアジアではどうだろうか?問うまでもなく、日本は嫌われ者である。戦後60年経ても日本は未だに侵略者なのである。戦争に負けたのに目覚しい復興をとげ大国となったのも(日本人の努力のたまものであったとしても)面白くない事実だろう。中国の反日デモの拡大は、自ら目覚しい経済的躍進を遂げ、アジアで初めて宇宙に有人ロケットを送り、北京オリンピック、上海万博と目白押しの世界イベントを目前にし高揚する国威の現れであり、中国こそアジアで一番の大国という強烈な自意識の現われでもある。

過去の侵略への反省を理由にあげているが、経済躍進でつかんだ自信、そして大国への野望を背景にしたとき、私は日本の常任理事国入り阻止こそ本音だろうと思う。デモを黙認(誘導している感もある)している国家当局の狙いもそこにあると思う。アジアで唯一の常任理事国という中国の立場を守りたいのだ。たとえ拒否権が与えられないとしても、日本の拡大常任理事国入りはなんとしても阻止したいのだ。中国の眼の上のたんこぶは常に日本。躍進中国とはいえ、GDPでは日本に程遠い。技術力しかり。いまだODA援助も日本からもらう立場なのだ。しかし、中国の大国志向はとどまる気配がない。アジアの盟主となり、欧州(EU)とアメリカとの三極の柱となることこそ最大の国家戦略なのである。両雄並び立たずという。日本との共存共栄は中国にとっては敗北なのだ。

一方いち早く反日ののろしを上げた韓国も、大統領自らが反日の先頭に立ち、日本憎しの火の手は一向に収まらない。同国最新調査によると危険な国のダントツ一位が日本だそうである。核を持ち軍備増強に走る中国、世界で最も危ない国である北朝鮮、さらにアメリカを抜いて日本が一位とは驚きである。ヨン様に明け暮れ安穏と暮らす日本人は、夢にも韓国に戦争を仕掛けようなどと思っていない。情けないほどに平和ボケなのに、危険な国1位とは!60年前の忌まわしい記憶は分かるとしても、60年経った今もその構図から一歩も前へ出られないとしたら、恐るべき時代認識といえよう。反日のデモに参加するのは、インターネットに反応した戦争を知らない若い世代である。日本の教科書など比ではない徹底した反日教育の成果でもあろう。

そういえば、60年安保、70年の学生紛争では、日本の若者は総じて反米であり、米帝国主義粉砕一色のスローガンを掲げていた。イデオロギーではなく時代がそうさせたのだと振り返って思う。私もその一人だった。若気の至りと今では思えるが、中国・韓国の若者もそれと同じなのか。それぞれが所属する社会・国家の閉塞感、経済的不平等感、そして行き場のない衝動的なエネルギーがその底にあるのだとしたら、国家は自らに向かうかも知れぬそのエネルギーを、巧妙に反日に向けさせているのだといえる。中国、韓国の権力者には、そうせざるを得ない抜き差しならぬ国家の事情があるのだろう。矛盾をはらむ一党独裁の中国共産党政権、権力基盤の脆弱な韓国の現体制にとって、国民の目を覆うものとして反日のスローガンは60年経っても有効なのである。

さて日本はどうすべきか。韓国、中国けしからん、といきり立っても解決にはほど遠いと思う。結局時間と外交がその溝を埋めるしかない。戦後、日本は戦争賠償をカネで解決してきた。世界との外交も突き詰めれば潤沢なカネの力に頼ってきた。カネの力にも限りがあるということだ。今こそ経済大国政治小国のレッテルを覆し、したたかな外交力に期待したいが、託すべき政党、政治家、官僚も見当たらない。当面、小競り合いが中国、韓国とは続くだろう。アジアの他の国々へ飛び火するのを危惧する。そして、日中韓の不協和音を歓迎してやまないのが北朝鮮である。日米、中韓露への六カ国協議陣営の分断は、核廃棄を含めた解決を先送りし、北朝鮮を利するだけだ。今後北朝鮮が何らかのアクションを日本に起こした時、反日を叫ぶ人々は快哉を叫ぶだろう。アメリカ一国頼りではなく、広範な外交努力でセーフティネットを築かなければならない。
(S)