| 眠れぬ夜に |
| 12月の声を聞く頃になると、さすがに朝晩冷え込む。ベッドにもぐりこむ時間も早くなる。本でも読もうかと思うが、ベッドで読書は姿勢がきつくつらい。といって、まだ眠くはない。そんな時、ラジオを聴く。 今どきの携帯ラジオは感度がよく、AM、FM、それに地上波のテレビ放送がクリアに聴ける。その深夜のラジオが案外に面白いのだ。オールナイトニッポンなんてまだやっている。パーソナリティのトークで構成される流れは、昔のラジオ全盛時代と変わらない。今日日はお笑い芸人が各局の顔である。時節柄トーゼンだろう。テレビと違って過激発言を連発するところがラジオの面白さだし、彼等もテレビのようにわずかな出演時間で視聴者をつかまなければいけないわけではなく、長時間のトークを生き生きと楽しんでいる。もっとも、長丁場だからこそ、やはりテレビでは映らない人柄が出てしまう。案外私生活でもセコイぞ、つまらん常識人やんか、なんて発見がある。機転、頭の回転力、といった才能もモロに出てしまう。テレビで面白いのにラジオではつまらない芸人が結構いたりする。ラジオだからと気楽に考えていると失敗する。芸人の地力が露呈する怖い仕事なのだ。現在オンエア中では、やはり爆笑問題が秀逸。終わってしまったがオセロの中島も良かった。生きのいいところでは、上田(くりいむしちゅー)か。 ところで、私の場合、本質的には、眠りへのいざないとしてラジオを聴いているから、面白さに引き込まれてつい明け方まで、では明日の体力に差し支えてしまう。というわけで、もっぱら音楽を主体に聴いているのだが、深夜にロックでは安眠の妨げである。そんな時は迷わずNHK第1放送の「ラジオ深夜便」である。日付が変わってから朝まで放送される、ご存知(かどうかは分からないが)熟年世代の人気番組である。明け方の「こころの時代」というロングインタビューを、朝早く目が覚めてしまった時に聴く事があるが、もっぱら、音楽である。それも懐メロがよくかかる。私など聴いたことのない昭和初期の流行歌なんてのもかかるから、聴いてる人たちの年齢が分かる。こんな深夜に日本のあちらこちらで、シルバー世代が息を潜めてラジオに聞き入ってる光景を想像してみるに、人生味わい深〜いという感じがする。 昨晩は、2時からの5分間のニュースの後、懐かしの外国映画音楽特集だった。「鉄道員」「禁じられた遊び」に始まり、アントン・カラスのチターの傑作「第三の男」「ひまわり」数え切れないほどの名曲を作ったニーノ・ロータの「道」・・少し新しいところでは「ボルサリーノ」「夕陽のガンマン」「炎のランナー」・・。いや〜どれもが懐かしい。すべて同時代に観たわけではないけれど、有名な映画であり名曲ばかり。ジャン・ギャバン、アンソニー・クイン、ジャンポール・ベルモント、アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー、クリント・イーストウッド、マルチェロ・マストロヤンニ、ソフィア・ローレン、銀幕を飾った名優たちがよみがえる。BGMのつもりが、つい1時間聴いてしまい、この文章を打つ今も頭が睡眠不足で朦朧としている。 いつか、そう遠くない日に、心ゆくまで深夜ラジオを聴く日々が訪れるかもしれない。懐かしい歌、曲を聴きながら、あの日あの頃を思い出してみる日々も、それは豊かな時間かもしれない、と思ったりする。所有する贅沢、から開放される人生の実り多き晩年に、私にもそんな自由な時間が待っていることを信じて、いま少し目の前のことに頑張ろうと、今日思う。(S) |