サッカー界の至宝だ!アンリ(アーセナル)
 ロンドンのハイベリースタジアムといえば、サッカーファンなら旧知のアーセナルのホームだ。スタンドの収容人数は決して多くはないが、由緒あるサッカー専用スタジアムだ。この90余年の歴史を誇るスタジアムが今期プレミアリーグ終了と同時に閉鎖され、来期は、すぐ隣に出来る超ビッグな新スタジアムがアーセナルの新本拠地となる。  
  5月7日夜10時(日本時間)。ハイベリーでの最終戦はウイガン戦。スタンドは自分の親やそのまた親が通ったに違いない伝説のスタジアムの最期を見届けようと地元アーセナルファンで一色となった。根っからのアーセナルフリークである私もテレビに釘付けになった。スタンドはおよそ横20列ごとに、当日配られたのかアーセナルカラーの赤を着た群、それと白のシャツを着込んだ群に分けられ、スタンド全体が赤い帯と白い帯が交互に続き、まるで紅白の幕に覆われたかのようだったからだ。そのツートンカラーの美しいこと!  
  ファンであることは割り引いても、その光景に心から感動してしまった。試合は、2−2の接戦から、アンリがゴールを重ねなんとハットトリックし4−2の勝利。この日リーグ4位だったトットナムが負けて5位から4位に滑り込み、最終戦で来期チャンピオンズリーグの出場権を確定。アーセナルにとって最高のフィナーレとなった。今期のアーセナルはリーグ戦でもたつき、この4位は決してほめられたものではないが、しり上がりに好調を取り戻し、最終的にCL出場の枠内に入ったのはさすがだった。  
  さてこのアーセナル、4月17日にはいよいよ、ロナウジーニョのバルセロナとチャンピオンズリーグの決勝戦を闘う。バルセロナは今期スペインリーグも制した、おそらく今最強のクラブチームだろう。しかし、アーセナルには勢いがある。場所も監督ベンゲル、そしてアンリ、ピレスの母国フランスだ。何とか勝って欲しいし、可能性は十分あると思っている。


 それにしても、我らがアンリである。今期プレミアリーグのダントツ得点王に輝いたその力は輝きを増す一方だ。アンリのゴールシーンを見て惚れ惚れするのは、そのゴール前での落ち着きである。決して強振しない。まるでパスを出すかのように、ゴールキーパーのディフェンスをかいくぐってゴールに流し込む。ゴール前まではいい形で来ながら最後に決められない、ボディバランスが崩れキープできずバタバタする、おなじみの日本のFWとの決定的な違いである。ゴールに近づけば近づくほど冷静になる。ゴールまでの動きに戦略性があり、まるで追い詰めた獲物に最期のとどめを刺すように決める。サッカーのおもしろさはゴールばかりではない。しかし、このアンリの官能的ともいえる一連の仕事に、サッカーの本当の感動を知るのである。  
 来期、スペインリーグへの移籍もささやかれている。もちろん新スタジアムの門出をアーセナルで飾ってもらいたいが、スペインリーグでの大活躍も見てみたい。今度こそパルムドール(欧州サッカー界のMVP)を手にしておかしくない選手だと思うからだ。

 来週、5月15日には、ワールドカップ日本代表が発表される。きっと、大抜擢はない。ここしばらく選ばれているジーコ好みのおなじみ選手が選出されることだろう。クラブでも代表でも、世界では10代の選手がどんどん抜擢されている。ワールドカップで、そんな若手から次のスターが生まれる。怖いもの知らずの若さが大きな仕事をやってのける。ここ2年のジーコの日本代表戦を見ても、思い切った若手の抜擢はほとんどなかった。確かに、平山(ヘラクレス)では心もとないと言うのだろう。しかし、若手は短期間のうちにミラクルな成長を遂げることがある。もう伸びしろのないベテランばかりで、メイクミラクルは期待できるのだろうか?アーセナルのベンゲル監督は、スカウトがリストアップする選手についてまず「いくつだ?」と必ず聞くと言う。20よりは19。18よりは17、16歳。血眼になって才能を秘めた若い選手を探している。そんな中から、かのアンリも発掘された。まあ、代表監督は短期契約、ワールドカップに出場出来てなんぼ、勝ってなんぼかもしれない。こんな時こそ、協会が若手を押し込めるだけの力が欲しい。4年後、さらにはそのまた4年後を見渡した時、一人ぐらい、10代の大抜擢があってもいいのだ。現に10代で大抜擢された小野(浦和レッズ)が今、円熟期を迎え、ニッポンを支えているのだ。
  ジーコの戦術、やりたいことが最期まで見えずに、本線を迎える。不安だらけのワールドカップだからこそ、それを願うのである。全く、無理だとは分かっていても。(S)